私の、歯の悩みは、長年の、喫煙習慣で、染み付いてしまった、茶色いヤニ汚れでした。人と話す時、つい、口元を隠してしまう自分に、嫌気がさしていた時、駅前のビルに、「30分3000円!セルフホワイトニング」という、看板を見つけました。「この値段なら、失敗してもいいか」。そんな、軽い気持ちで、私は、サロンのドアを開けました。店内は、美容院のような、おしゃれな雰囲気。スタッフの女性から、簡単な説明を受け、個室ブースで、鏡と、向き合います。言われるがままに、歯を磨き、ジェルを塗り、青い光を、10分間。それを、3回、繰り返すだけ。本当に、手軽でした。そして、施術後。鏡の中の自分の歯を見て、私は、素直に、感動しました。あれほど、こびりついていた、茶色いステインが、明らかに、薄くなっている。歯の表面も、ツルツルしていて、ワントーン、明るくなったように感じました。「すごい!これで3000円なら、大満足だ」。しかし、その満足感は、長くは続きませんでした。施術後、2週間もすると、また、いつものように、コーヒーを飲み、タバコを吸う生活の中で、歯の色は、徐々に、元のくすんだ色へと、戻っていったのです。そんな時、友人が、歯科医院で、本格的なホワイトニングをした、という話を聞きました。彼女の歯は、私とは、明らかに違う、内側から、発光するような、透明感のある、見事な白さでした。「やっぱり、プロは違うのか」。私は、結局、友人が通った、歯科医院を、予約しました。そこで、歯科医師から、私の歯の黄ばみの原因が、表面的なヤニだけでなく、加齢による、内側の象牙質の色にもあること、そして、サロンと歯科では、薬剤の仕組みが、根本的に違うことを、初めて、詳しく、教わりました。サロンホワイトニングは、汚れた服を「洗濯」するようなもの。歯科ホワイトニングは、生地そのものを「漂白」するようなもの。その違いを、私は、身をもって、実感したのです。今では、歯科でのホワイトニング後の、メンテナンスとして、時々、サロンを利用しています。サロンは、手軽な「汚れ落とし」として、歯科は、本気の「美白治療」として。それぞれの役割を、正しく理解すること。それが、遠回りのようで、一番の、近道だったのです。